国際バカロレア(International Baccalaureate=IB)とは、1960年代にスイスで開発された教育プログラムです。一つの国の制度や内容に頼ることのない、世界標準の教育プログラムとして発達したものです。探究を基盤とし、学習者中心の教育活動が行われるのも特徴の一つです。
1.青森南高等学校の教育目標
「青森南高等学校は、グローバル教育と探究学習を推進し、思いやりや多様性を尊ぶ態度を育み、広く国際的な視野に立って社会の発展に貢献できる人間の育成を目指します。」
"Aomori Minami Senior High School promotes global education and inquiry-based learning, fosters an attitude of consideration and respect for diversity, and inspires students to play an active role in the global world with a spirit of challenge and international mindedness."
2.青森南高等学校と国際バカロレア
青森県立青森南高等学校は、国際バカロレア(IB)DP(Diploma Programme)の候補校です。本校は、IBワールドスクール(IB認定校)としての認定に向けた申請段階にあります。IBワールドスクールは、「質の高い、チャレンジに満ちた国際教育に信念をもって取り組む」という理念を共有する学校です。本校も、このような教育に取り組むことが、生徒にとって大切であると信じています。
国際バカロレアの教育理念
【IBの使命】
IBは、多様な文化の理解と尊重の精神を通じて、より良い、より平和な世界を築くために貢献する、探究心、知識、思いやりに富んだ若者の育成を目的としています。
この目的のために、IBは、学校や政府、国際機関と協力しながら、チャレンジに満ちた国際教育プログラムと厳格な評価の仕組みの開発に取り組んでいます。
IBのプログラムは、世界各地で学ぶ児童生徒に、人がもつ違いを違いとして理解し、自分と異なる考えの人々にもそれぞれの正しさがあり得ると認めることのできる人として、積極的に、そして共感する心をもって生涯にわたって学び続けるよう働きかけています。
国際バカロレアの学習者像
すべてのIBプログラムは、国際的な視野をもつ人間の育成を目指しています。人類に共通する人間らしさと地球を共に守る責任を認識し、より良い、より平和な世界を築くことに貢献する人間を育てます。 IBの学習者として、私たちは次の目標に向かって努力します。 1.探究する人 (Inquirers) → 好奇心を持ち、探究し研究するスキルを身につけます。ひとりで学んだり、他の人々と共に学んだりします。 2.知識のある人 (Knowledgeable) → 幅広い分野の知識を探究します。その知識を生かし、地域社会やグローバル社会における重要な課題や考えに取り組みます。 3.考える人 (Thinkers) → 複雑な問題を分析し責任ある行動をとるために、批判的かつ創造的に考えるスキルを活用します。率先して理性的で倫理的な判断を下します。 4.コミュニケーションができる人 (Communicators) → 複数の言語や様々な方法を用いて、自信をもって創造的に自分自身を表現します。他の人々や他の集団のものの見方に注意深く耳を傾け、協力し合います。 5.信念をもつ人 (Principled) → 誠実かつ正直に、公正な考えと強い正義感をもって行動します。そして、あらゆる人々がもつ尊厳と権利を尊重して行動します。 6.心を開く人 (Open-minded) → 自己の文化と個人的な経験の真価を正しく受け止めると同時に、他の人々の価値観や伝統の真価もまた正しく受け止めます。 7.思いやりのある人 (Caring) → 思いやりと共感、そして尊重の精神を示します。人の役に立ち、他の人々の生活や私たちを取り巻く世界を良くするために行動します。 8.挑戦する人 (Risk-takers) → 不確実な事態に対し、熟慮と決断力をもって向き合います。ひとりで、または協力して新しい考えや方法を探究します。 9.バランスのとれた人 (Balanced) → 自分自身や他の人々の幸福にとって、私たちの生を構成する知性、身体、心のバランスをとることが大切だと理解しています。また、私たちが他の人々や、私たちが住むこの世界と相互に依存していることを認識しています。 10.振り返りができる人 (Reflective) → 世界について、そして自分の考えや経験について、深く考察します。自分自身の学びと成長を促すため、自分の長所と短所を理解するよう努めます。 (「IBの学習者像」(国際バカロレア機構)より引用) |
1.IBDPにおける、①3つのコア科目と②6つのグループ(科目)
① 3つのコア科目
コア科目名 | 内容 |
1.課題論文 (Extended Essay = EE) |
履修科目に関連した研究分野について個人研究に取り組み、成果を4,000語(日本語の場合は8,000字)の論文にまとめます。 |
2.知の理論 (Theory of Knowledge = TOK) |
「知識の本質」について考え、「知識に関する主張」を分析し、知識の構築に関する問を探究します。批判的思考を培い、生徒が自分なりのものの見方や、他人との違いを自覚できるよう促します。最低100時間の学習が必要です。 |
3.創造性・活動・奉仕 (Creativity / Activity / Service = CAS) |
創造的思考を伴う芸術などの活動、身体的活動、無報酬で自発的な交流活動といった体験的な学習に取り組みます。 |
② 青森南高校で実施予定の6つの科目
グループ | 青森南高校で実施予定の科目 |
1.言語と文学(母語) | Literature(文学)SL / HL |
2.言語習得(外国語) | English B(英語)SL / HL ※英語で実施 |
3.個人と社会 | History(歴史)SL / HL |
4.理科 | Chemistry(化学)SL / HL |
5.数学 | Math Analysis and Approaches(数学)SL / HL ※英語で実施 |
6.芸術 | Physics(物理)/Biology(生物)SL / HL ※芸術科目の代替科目を理科とします。 |
※ 日本語DPでは、6科目中2科目は英語で実施する必要があります。
HL = Higher Level(上級レベル)各240時間履修
SL = Standard Level(標準レベル)各150時間履修
2.最終試験と資格
IBの最終試験は3年次の11月に行われ、各教科の7点満点と、TOKとEEを組み合わせた3点満点があるので、IBのスコアは、7点満点×6教科+3点満点(TOK・EE)=45点満点となります。24点以上で国際バカロレア資格が与えられます。
国際バカロレア資格は、国際的に通用する大学入学資格として、国ごとに具体的な取扱いは異なりますが、世界の多くの国々の大学において、大学入学資格として幅広く受け入れられています。
3.卒業後の進路
【 国際バカロレア入試 導入大学 例 】2024年1月時点 文部科学省IB教育推進コンソーシアムHPより |
4.FAQ(よくある質問)
❶ IBDPでは英語で行われる授業があるようですが、ついていけますか?
⇒ 英語で実施する科目にも日本人教員のサポートがあるので、どうしても理解できないときには日本語で確認することもできます。しかし、最終試験は全て英語で行われますので、個人の努力を継続することも必要です。
❷ IBコースを選択しても、部活動や行事に参加できますか?
⇒ 参加することはできますが、CAS活動や家庭での学習時間が多くなるので、部活動は他の生徒と全く同じようにはできなくなるかもしれません。行事は他の生徒と同じように参加できます。また、海外フィールドワークにも参加します。
❸ IBコースを選択したら、途中でやめることはできませんか。
⇒ 文理選択と同様に、途中で変更することはできません。
❹ IBコースに進むと、大学受験はどうなるのでしょうか?
⇒ 海外の大学だけでなく国内の大学でも国際バカロレア入試を導入する大学は増えています。また、IBでの取り組みを生かして、総合型選抜や学校推薦型選抜にチャレンジすることもできます。ただ、IBは探究を基盤とした学習プログラムであり、いわゆる知識を詰め込むような学習ではありません。よって、大学入学共通テストや各大学の個別試験等を利用する一般選抜での受験はかなり難しくなります。
□国際バカロレアについてさらに知りたい方はこちらもご覧ください。
International Baccalaureate HP
https://www.ibo.org/
□ 文部科学省IB教育推進コンソーシアムHP
https://ibconsortium.mext.go.jp/